Q.「灯篭」と「灯籠」の違いは?―― A. 意味は同じで字体が違うだけ。
サムネイル画像で使用: いらすとや
「灯篭」と「灯籠」の違いは、表記上の違いだけ であり、両者はまったく同じモノを指しています。
とう‐ろう 【灯籠・灯楼】
解説・用例
〔名〕 (1)油、ろうそくなどの灯明をほや、かごなどで保護する具。主として屋外で、手に提げたり軒先につるしたり、また脚をそなえて庭先、道ばた、社殿や仏堂の前などに立てる。材料や形状などで、石灯籠、春日灯籠などいろいろの名がある。とうろ。《季・秋》
(中略)
表記
【燈籠】黒本・易林・書言・ヘボン・言海
【灯楼】伊京・饅頭・黒本
【灯篭】伊京
【燈楼】書言"とう‐ろう【灯籠・灯楼】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2024-12-23)
日本国語大辞典の記載を引用しましたが、ここに書かれている通り、「灯篭」「灯籠」は、一つの単語のさまざまな表記のバリエーションのうち2つです。
両者の違いについて、あたかも両者が異なるものを指しているかのような説明をしているサイトがありますが、それらは全くの誤りです。
異体字について
「楼」は建物という意味なので、違う字なのは明らかで、「音も同じだし意味が似ているから、どちらで書いても正しい」パターンだと想像がつくと思います。
では、それ以外はいったい何なのでしょうか?これは「異体字」と呼ばれる字体のバリエーションです。
「灯」(トウ・ひ) という字は、この字体が常用漢字表に記載されています。「燈」は異体字で、康熙字典体(いわゆる旧字体)と呼ばれるものです。(参考: 燈 - Wiktionary)
「籠」(ロウ・かご・こもる) という字は、この字体が常用漢字表に記載されています。「篭」は異体字で、略字です。(参考: 籠 - Wiktionary)
異体字については、以下の説明がわかりやすいです。
Q11 「異体字」とは
「異体字とは, どういうものですか。」A 同じ漢字として通用しても,字体が異なるものを言います。例えば,「学」と「學」はお互いに異体字の関係にあるとも,「學」は通用字体「学」の異体字であるとも言います。
常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)(案), 平成28年2月29日, 文化審議会国語分科会, p.72 https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/2016022902.pdf
つまり、「灯」を「燈」に入れ替えても意味は変わらず、同様に、「籠」を「篭」に入れ替えても意味が変わりません。
だから、日本国語大辞典の見出しでは「灯籠」「灯楼」だけが列挙されていて、「燈」や「篭」が無視されているわけですね。
まとめ
「灯篭」と「灯籠」が異なる種類のものを指している、もしくは一方がもう一方よりも狭い範囲を指しているかのような 誤った説明 が検索上位に上がっていますが、これは全く異なっています。
両者は、「異体字による表記違い」の関係であり、意味の違いはありません。
「籠」のほうが常用漢字表に記載されているので、公文書など、そちらを使うほうが好ましいとされる場面はありますが、私的な範囲であればどちらで書いても問題ないと個人的には考えます。
ちなみに、ChatGPTなどの生成AI(LLM)は、このような、「日本語における、表記の違いによるニュアンスの違い(あるいはその有無)」というトピックには弱く、ハルシネーション(事実に反する内容だが、流暢な説明をしてしまう現象)を起こしやすいという印象を受けます。
実際に質問してみると、誤った回答をしてくれました。(2024/12/23 ChatGPT 無料版)
少なくとも、このようなトピックは、今回使用したモデルにとっての苦手分野だったようです。やはり、生成AIに頼って早合点してしまうのではなく、基本的な背景知識を生成AI以外のソースから得ておく・Google 検索をうまく使って裏を取るなど、対策しましょう。